男の目は大男にくぎ付けになった
なに、なんといったんだこいつは、おまっ…はあ?
またせてないだれだおまえは
こいつ俺をしっているのか、こんな場所もしらん
なんで海岸にいたのか覚えてない俺だが、ここが知らない場所だというのは
確信をもって言える!
男はパニックになった、大男もこの船も全く身に覚えがない
ましてやおまちしてましたなんて言われる筋合いがない、知らない
「見つかってよかった」
大男は続けて話す
男は叫ぶ
「見つける??誰だお前は!!なにしてるんだ!!?」
腰が抜けたまま男は喚き散らす
大男は淡々と話す
「ご無事でなによりです、お怪我はありませんか」
男は震えながら答える
「けっ…けがなんかしてない、おまえうわだれだんだ!?」
大男がいう
「それはよかった、私はあなたを助けにきたものです」
「それはもうわかったから、助けるってどういうことだ?」
男はもう冷静さを失っていた
男の変わりに猿の中隊長が話し出す
「あなたは誰ですか?」
大男は答える
「私は海兵隊員です」
「海兵隊ってなんですか?」猿は素直な疑問をぶつける
「戦闘部隊です」大男は淡々と答える
「戦闘部隊?」猿中隊長は一歩下がり警戒をする、周りにいた猿団員も剣の柄に手をかける
「攻撃の意思はありません」大男は両手を上にあげながらゆっくりと答える
「助けるとはなんだ?」正気を取り戻した男が立ち上がって聞く
「落ちた市民を救助しています」大男が答える
「落ちた?どこから?」
「船から多くの市民が落ちました」
「なんの話をしている」男は会話がかみ合っていないと思っていた
「まずは奥へ」大男は催促する
「どこにいく?」
「医療室です、まずは怪我を確認しなければ」
男は思った、なぜこいつは船が見るも無残な姿になったことに気づいていないのか
会話がかみ合わない
「わかった、案内してくれ」男は大男にいう
「かしこまりました。こちらへどうぞ」大男は道案内を始めた
男はハンドサインで猿隊員の一人に増援要請を指示した
事前に教えておいて正解だった
声で指示したらこいつがなにをするかわかったもんじゃない
なんだ海兵隊って、殴り込み部隊じゃないか
宇宙船になんでそんな場違いな部隊がいるんだ?
まだ海軍とか陸軍とかならわかる、、いやそもそも宇宙船に兵士?
助けるなら消防隊とか救助隊とかだろう
あと落ちた市民とはなんのことだろうか、、おれは落ちて海岸に漂着したのか?
いやこの船の損傷具合からして時系列が合わないおれは落ちた市民ではない、
こいつはなにか勘違いしている
ひとまずこいつがどこに連れていくかで今後の対応を判断しよう
普通なら逃げ出したりするかもしれないが、男はやはりどこか壊れているかもしれなかった
逆についていって確かめるという危険な真似を思いつくんだから、
そういう危険に進んで首を突っ込むあたり、根本的には何も変わっていないのかもしれない
だが男は一周回って興奮していた、さっきは取り乱したが、いまはもうワクワクしかなかった
機械だらけの謎の島で、ついに元凶というか、
まさに今までの謎の答えのようなものが目の前に現れた気がしたからだ
ここを逃したら、こんな絶好の機会はもうないかもしれないと思った
大男、もとい一つ目の海兵隊員は慣れた足取りで、船内を進む
船内はどこもボロボロで、全く機能していなかった
医療室というのは保健室のようなものだろう
一応自分は要救助者のようだから、助かったとは言え健康状態のチェックが必要らしい
「到着しました、医療室です」海兵隊員は言った
そこには蔦に絡まれ斜めになった骨組みだけのベッドや、
おそらくCTやレントゲンであろう機材もあった
だが、木の幹が貫通しており、穴が開いていて、中から狸のような生物が顔を出していた
とても機能しているとは思えなかった
「…ありがとう」男は礼を言った
「では私は救助任務に戻ります」兵士はキビキビと向き直り、医療室を出ていった
しばらくして増援の中隊が来た
増援の猿中隊長が話し出す
「大丈夫ですか?」
「平気だ、それよりあれはなんだとおもう」
「わかりませんが、敵ではないように思います」
「なぜ」
「先ほどすれ違いましたが、本気であなたを、その…市民?と思っていました。
彼を頼みますといわれました」
男は頭を抱えた、ここへきて不思議なやつが登場した、だれなんだなんなんだ
敵じゃないのか、海兵隊のくせに、救助ってなんのことだ、疑問しか浮かばない
まあ正直な話、今の猿と男ではあいつ一体でも太刀打ちはできない
あの図体で音も出さずに真後ろをとられた、一応それなりの戦闘経験を積んでいる猿でも
動きを追うだけで目には追えなかった
そして一番の疑問はなぜこの船がまだ機能していると思い込んでいるのか、だ
こんな大自然の宝庫みたいになっているのに健康チェックができると思っている
どこかおかしい、忠実に任務をこなすところは評価するが、やはりおかしい
男はこの周辺の地図を作ることにした
ひとまず現状把握だ、あの海兵隊が他にもいるとしたらかなり厄介だ
猿たちは敵と認識されなかった、そして猿たちも敵とは認識しなかった
これもなぜなのかは考える必要がある、もうつかれた
一旦藤の森まで撤退することにした、整理したい、もう何が何だかわからない
船の近くにいたらまた海兵隊にばったり会ってしまうかもしれない
男は医療室をでて船の出口に向かう
「どちらへ?」
後ろから声をかけられた
また腰を抜かしそうになった
「帰る」と男
「あなたの家はここです」と兵士がいう
「いやここではない」と冷静に男は言った
「なぜですか?」一つ目は後ろから首をかしげながらぐいっと男の顔を覗き込む、
瞳こそないが子供のような無邪気さすら感じる
「もう大丈夫だから、その…そとの空気を吸ってくる」
「お気をつけて」兵士は反対を向き、通路の奥に消えた
男は大きく安堵のため息をついた、怖かった
3mはあるだろうか、でかい、覗き込まれただけで膝が地面を掘れそうなほどに強く震えた
よく考えると、この船はやたらでかい、通路は高く、あの兵士が悠々と歩ける高さはある
まあ樹の幹が貫いているので低くなっているが、それを除くとこの船はかなりでかい
男は船を出て、足早に藤の森へ向かった
一応見張りのために一個中隊を残して置き、何かあればすぐに伝令鳥を飛ばすように言った
藤の森に入ったとたん、男はくさっぱらに倒れこんだ、大きく深呼吸し、ため息のように吐く
つかれた…
まったく生きた心地がしなかった、何者なんだあいつは
とにかく整理しよう
まずあいつは海兵隊員である、体長は約3m、大きな一つ目で全身が黒い、怖い
デカい体して素早く、真後ろをとれるほどに音が出ない、あれは本物の機械兵士だ
だが任務は市民の救助、市民は”落ちた“らしい
男のことを市民と認識している、探していたようだ
船が現在も稼働していると思い込んでいる
謎しかない、たが仮説なら立てられる
まあ船が落ちたという仮定がそもそも意味不明だが
仮に落ちたとしよう、船の乗組員(市民)が何名か落ちた
兵士も動員しての捜索をしていて、やつはその捜索任務にあたっていた
ところが機械だから忠実に任務を遂行するあまり今も続けている
うん、無理だ、意味が分からない、船に木が生え、狸が巣を作っても気づかないとは
男は伝令鹿を出した、宛先はワコである
この局面はもう北がどうのこうのと言ってられない、こちらも全力で対処する必要がある
ワコが着次第、もう一度あの一つ目と話そう、そして情報を引き出すんだ
もしものためにワコの力がいる、多分猿たちの手には余る
こいつらも今となってはなぜかでかくなっていて、2mはあるんだが、それでも無理だ
うちの自警団で最も大きいのは熊一族である、ワコはもう3mは確実にある
それでも互角かどうかはわからないが、、、
ワコが来るまでに、男は状況の整理をする
そしてさらに周囲の偵察を実施しておくことにした
多分、船の周りに動物がいないのはあの兵士がいるからだと思う
男には今のところの仮説がある、
この藤の森はおそらくこの船を機械獣や生物獣・虫から守るためにあるではないか
そうでなければ船の周りになにもいないのがおかしい、仮に兵士が強いとしても
それだけで虫の一匹も現れないなんて絶対にありえない
この藤の森に何かあるんだ
全体像をつかんでからでないと、まだわからない、時間を有効に使おう
ここは冷静に対処しなければ今までの苦労が水の泡になる
いまもまだ、体が震えている
オオヅツとはまた違う恐怖に男はおびえていた
人間の恐ろしさというか、生存競争とは違うなにか、別の恐怖だった
この森に入ってからの視線はあいつだったのかもしれない
そう考えるといつでもやれたのかと気づきまた震えが止まらない
震える体をさすりながら、男は月を見上げる
船、落ちる、なんなんだろう、、
月は何も言わずにただ見つめ返してくる
ひんやりとした風が男の頬をなでる
藤の花が揺れ、シャラシャラと小気味よい音を立てる
しばらく聞いて、やっとまだ生きていることに安堵した

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