滝の基地で準備をしている男に全線から伝令鹿がきた
鹿は言った「負けた」と
先遣隊敗北、防衛線が抜かれた
男は号令をかける
準備ができた隊から順次出発、渓谷の入口へ迎えと
問題は敵の戦力である
伝令鹿に聞くも大きな獣が突撃して大勢仲間がつぶされたとしか言わない
他の戦力は全く見ていなかったため不明
これが急ごしらえの部隊の限界だろうか
この鹿が出発前に見ていた軍勢だけでも情報があれば、そのあとの戦力が予想できるのに
諜報部隊も偵察部隊もバラバラに活動しているため、こういうミスの際のフォローができない
なんともどかしい、なんと悔しい
これでは各個撃破されてしまう
男は偵察隊の鳥を飛ばした、しかしいつまでたっても帰ってこない
いくか…
男はとにかく準備を急いだ
そして渓谷を中心に扇形に防衛陣を張り、どこに向かっても迎撃できるように体制を整えた
少しづつ、扇を小さくしていきながら渓谷に向かっていく
正直全方向をカバーできるわけではないが、抜けてしまうのなら仕方がない
あとは森に任せるしかない
一匹ずつ追いかけていたらきりがないのだから
こうして男たち自警団は渓谷の入口に到着した
道中、幾度も竜と狼の襲撃にあった
大群というわけではなく、どうやら波状攻撃にやられたようだ
しかし大きな獣ってなんだ?
地面には確かに今まで見たことない大きな足跡がある
入口には先遣隊たちが倒れていた
猪に乗せ、後方へ送る
10個中隊でこのまま南で進む
目的は敵の親玉を退治する、または敵のアジトのような場所を占領すること
諜報部隊からの情報で南側の渓谷の出口周辺は密林であり、周囲は見渡せず
鳥たちの中には狼と竜以外の機械獣に襲われけがを負ったものもいたそう
どうやら南はなんでもありの様だ
ひとまず出口へ向かう
キノメヅを除けばずいぶんと楽に出口までこれた
何匹か陰から現れたキノメヅにやられた
出口につく
渓谷の南側の出口周辺は密林であり、霧が濃い
気温が低めのようで、少々寒い
今は朝方、日が少し出てきたあたりだ
偵察の小鳥をはなしてしばらく経つが、帰ってきたのは数羽だけ
しびれを切らした男は慎重にといいつつまっすぐ南へ道なき道を進む
この判断が誤りだった
まず報告にあった竜と狼以外の機械獣とは蛇・鰐・鷹などの凶暴な獣たちだった
さらに川の中にはソゲキンギョなんぞ霞むくらいの巨大な牙をもつ魚や
小さいくせに群れて自分より大きな魚を食してしまうようなものなど
信じられない機械獣の宝庫だった
さらに不思議なのは、この密林には生物もいた
ヒルのような生き物やクモ、生物のワニ、ヘビもいた
男はいままで自分は襲われないと高をくくっていたが
ばんばん狙われ指揮もろくに取れなかった
さらに気づいたことだが、機械獣にとって生物はほぼ関わりがない
なんか通じ合っているものがあるようにも見えるが襲うことはない
これが困った、生物は生物しか狙わないということだ
そして機械獣は機械獣しか狙わない、つまり機械獣に助けてもらうことができなかった
男は自分の身を守りつつ森を突き進んだ
幸い機械樹と生物樹の森が混在しているおかげで、男と自警団は交互に休みながら進んだ
ひどい、ひどい有様だ、こんなのいつ自分が死んでもおかしくない
北は甘かった、ぬるかったこんな危険な場所が同じ島にあるとは思わなかった
数日さまよい、朝も夜も様々な獣や虫に襲われながらもがむしゃらに進んでいく、
もうどこまで歩いたのだろうか
南に向かっているのは間違いない
もう今さら引き返してもまた犠牲がでるだけだ
ある程度は準備をしてきた、このまま進むしかない
と突然、妙な場所に出た
一面紫色の森だ
なんだろう、藤の花だろうか
生物樹なのか機械樹なのかわからない
藤の花に似ているが違うようにも見える
鮮やかな紫である、もう暗くなるが気のせいか光って見える
そしてここはなぜか機械獣も生物もおとなしかった
助かった
ここに男は陣を敷く
幸い戦闘中隊は犠牲はなし、ただ偵察隊は割とやられた
どうやら大きな猛禽類の機械獣がいるようだ
北にはいなかった
男はやっとできた休憩時間を使い状況を整理する
南の森の生態系は生物と機械がほぼ同居している不思議な空間である
だが機械は機械、生物は生物同士で食物連鎖がある
そして驚いたのは樹木である
なんと一部機械の生物樹がいた、共存しているのだろうか
むしろ機械が寄生しているといった方がよさそうだった
ということは機械は生物に浸食できる能力があるのかもしれない
ただそういった事例は少なかった
見かけたのは一度だけだ
偵察のため鳥を空に上げると、一瞬で大きな鳥にさらわれ、金属の羽が数本、地面に落ちてくる
なんという弱肉強食であろうか、北は本当に平和だったようだ
藤もどきの観察をする
見た目はどう見ても藤の花だ、紫色で、淡いの濃いのが少々混じっている
とても美しい、、、これはたぶん機械の花だと思うが、こんなに美しい花はなかなかない
機械の花でもキレイなのあるんだな…男は感心した
最後に機械の花を見たのは、昔懐かしい湖時代のこと、ヒガンバナのような赤い花だった
あれも機械の花だったが、当時の男には感受性というものはなかったため、なにも感じなかった
なぜいまになって美しいと感じたのは不明だ
いつの間にか感受性が豊かになったのだろうか
藤花の地域は結構広かった
おかげで何にも襲われることなく、安全に南へ進むことができた
島の中心部からやや南を過ぎたあたりから藤花が減ってきた
そろそろか、男は覚悟をして藤花の空間をでた
なにも襲ってこなかった
静か森だ
男は肩透かしをくらった
警戒していたのに
なんでだろう、急に平和が訪れた
警戒しつつも進んでいくと森が開け、蔦や葉まみれの緑色の岩山がでてきた
岩かと思って近づく、男は目を見開いた、二つの月の時以来の衝撃だった
金属の表面、ところどころに見え隠れする技術力、、大きな機械樹か、、?
いや
うそだろ
まさか…
それは朽ち果てた宇宙船だった

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