男はこの樹の妖精のような人型を「笑楽」と名付けた
自分でしょうらくといったからだ
あの言葉の意味はいまだに分からないし、いまも何かを伝えようとしているが
やはりわからない
ただご神木の言っていた、大切にしろという言葉だけは覚えている
アタリが終わったとき、笑楽の体から生えていた枝が数本折れていた
男はこの枝を十三中隊に捜索させた、なんか大事なんだろうと思ったからだ
折れた枝を集め、笑楽に渡すと、笑楽はありがたそうにした後に、男に突き返した
そしてなにか必死に伝えようとしていた
よくわからないので、ご神木に会わせることにした
「おっほ!きたか!若木よ!」ご神木は喜んでいる
「したばありにしきて、くれまつかいなきよ」笑楽はそう言ってお辞儀をした
「よいよい、気にするな、座れ」ご神木は楽にするように言う
「まてまてまて、お前、こいつの言うことがわかるのか?」
「わかるとも、道に迷ってしまった、遅れて申し訳ないと言っている」ご神木はしれっといった
男は言葉を失った
「何語だ?」と男
「しいて言うならば、機械人語とでも言おうかの、
機械兵士や指揮官が話していた言語とお主の言語が混ざっている
さらにそこに森の未成熟の理解も加わって、文字はお主も知っているものだが
順番などはめちゃくちゃだ、だがわしは最強なのでな、そんな乱れた順番も、わしにかかれば
こうして翻訳することができるというものじゃ、まあ普通にいつも通り言葉を教えい、それで済む話じゃ」
「はあ…」
森というものが賢いのか阿呆なのかがわからなくなってきた
「で?何しに来た?」
「この枝の使い方を聞きにきた」
「これはわしに預けよ、今後も続けるのじゃ」
「これはなんだ?」
「知恵袋、いや知恵の枝とでも言おうか」
「知恵の枝?」
「この笑楽は、森から機械生命界に送り込まれたいわば使いなのだ
こいつは今必死に知識や情報を収集している、そして得た情報は、この枝にしまって落とす
すると森はこの枝を回収し、森の知識として吸収する、次に人型を産むときにその情報を反映するためだ
こいつが終わりの地に来るのを待っていたら、知能の更新にとんでもない時間がかかってしまうからな」
訂正しよう、森はちょっと賢い
男は感心した
確かに、終わりの地で森に還って初めて森に知恵が共有されるのなら
こいつが終わるまで森は待たないといけない
いかに森が急いでいるのかがわかる
「森はな、先の戦で、人型に脅威を感じている、だがそれと同時に可能性も感じているのだ
だからお前という存在が大切なのだ、こいつらを導け、そして森を島を、国を、守る礎とせよ」
急にらしくない言葉を言われ、男は面食らった
「なんだ急に暑苦しいな、わかったよ、とりあえずこいつがどんな奴か調べて、教育してやる
俺の言葉は理解できているのか?」
「えい」と笑楽
「できてるみたいだな、じゃあ早くことばを覚えような」
「えい」
変な返事だな、力が抜ける
「そこは、はい、な」
「あい」
「ちがう」
「えい、、え、ん、うあお、ああ、あ、あ、い、あい、あい、う、ふ、は、はあい、、、はい」
まただ、この学習の速さはなんだ
この同じ音が出るように調節するような動き、ワコの初期と同じだ
「これが機械生命というやつじゃ、慣れよ」とご神木
「いつも思うが、こいつらの学習の速さは恐怖すら感じる」
「数万年かけて今の生命の循環を得た、舐めてもらっては困るんじゃ」
「そうか、これがこの星の生存競争を勝ち抜いた種の姿なんだな」
「そういうことじゃ、まあ、ほかにもぶっとんだ進化を遂げてそうなやつらもいるかもじゃがな、あはは!
わしらはまだ正統派かもしれん、のぉ、笑楽よ」
「はい」
ご神木に挨拶して晴渡館に戻った男は、皆に笑楽を紹介した
そして、まずはこいつがどういうやつなのかを研究することにした
ひとまず知識・体力の検証だ
とにかく色々なことをやらせた
腹筋、背筋、スクワット、腕立て伏せ、それぞれ10,000回ずつや
島を一日中走らせたり、出壁山脈を10回登山させたり、
海に潜らせたり、川に潜らせたり、潜水の限界を測ったり(限界はなかった)
初代筒頭と当たらせたり(笑楽は負けた)、初代樹持三人衆とも当たらせた(もちろん負けた)
ただ、何回も戦わせてるうちに、だんだん学習しているようにみえた、
10回目の戦いのとき、なんと樹持の一人である猪の走火に勝ったのだ
これには男は驚いた、最初は瞬殺されていたのに
こいつの学習能力の高さがうかがえる
笑楽の枝は一日数本折れて落ちた
今ではもう十三中隊から付き人を出し、常に拾わせている
そして定期的にご神木へ届けている
受け取るたびに、ご神木は笑楽が何を学んだかわかるようで
そうかそうか、いい学びをしているな、などどいってくる
色々とやらせたところ、こいつには消耗というものはほぼないことが分かった
なにで動いているのかよくわからない
ただ時々、樹や地面にべったりはりつき、全身で大自然を感じている時がある
おそらくこれはやつなりの充電なのだろう
さらに驚くべきは身体能力だ
初めて出会った時は、左右の腕の長さが違っていた
だが最近は、長さがあってきていた
代わりに、脇や肘の関節からぽろぽろと何かのパーツが落ちてきた
これも付き人が回収している
おそらくだが、こいつは森の試作品なのだ
様々な経験を通じて、不要なものをそぎ落としているのだろう
枝もだいぶ落ちてきた
この前は、なんと角が一本折れた
森に届ける情報が相当溜まったのだろう、あといらないことに気づいたのだろう
言語習得も着実に進んでいった
ワコや十三中隊の連中ともだんだん話せるようになり
他の探検隊や囲炉裏の参加者とも会話できるようになってきた
やがて角は3本ともなくなり、つるつるの頭が現れた
枝もほぼなくなった、腕の長さも揃った
目玉もいくつか落ちていき、今は3つある
肌もバリバリの樹皮のような質感から、つるつるで滑らかになり
より金属感が増してきた、色もいつの間にかこげ茶色から黒い鉄のような色に変わり(日焼けか?)
ことばも流暢に話始めた
このころになると、十三中隊の連中と共に行動するようになっていた
やはり指揮官たちの知性を引き継いだ体なだけはある、動植物も地理も星も気象天候も、
理解も分析も段違いに早い
どうやら星が好きなようで、夜はずっと星を見ている
そのせいか、だんだん目がよくなり、3つある目のうち、一つは観測に特化した目になったようだ
鼻の上あたりに三つ目の大き目な目玉があり、両側の目は人間のそれと同じ位置・大きさである
少々アンバランスだが、一番デカい目が星の観測や気象観測に役立つのは正直助かる
機械獣たちはあまり遠くが見えないらしい、森の中はよく見えるようだが
やはり進化の仕方が異なるようだ
笑楽の場合、星の観測をさせた時から、専用に目を進化させたようだ
こいつら人型には”最初に何をやらせるか”が重要なカギになる気がする
それに合わせて、進化していくのだから
何か月も特訓や学習を繰り返した結果三つ目以外はほぼ人間に近い形になった
一通り言葉も覚え、囲炉裏会議などでも対等に話せるようになった
体術も初代筒頭の日久万といい勝負ができるようになり、先日ついに一勝を挙げた
そしてこの時、最後まで残っていた尻尾がついに取れた、どうやら一人前になったようだ
このご褒美として、男は笑楽の名前を新たなものにした
「三象覚 笑楽 森人」(さんしょうかく しょうらく もりひと)
三は三つ目の意味
象は星や気象観測などの現象の観測が得意という意味
覚は猛烈さ速度で覚えた賢さを褒めている
笑楽は自分で言った名前だから尊重した、いわばこいつの幼名だ、消すのもあれなので、残す
森人はこいつが最初に言っていた名前だ、
ただ森人はおそらく、これから生まれる人型全員が森人な気がする、まあ今後出てきたやつにも聞いてみよう
筒頭に勝ち、言葉も覚えたため、もう一人前となったことを認め
苗字と名前を与える
これからは三象覚と名乗るがよい
「はい!」


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