晴輪物語【始記】26 自警団と犠牲

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現実的に考えよう

拠点は3つ、現状指揮が取れるのはおそらく男のみ

戦力はワコのみである

 

まず兵隊が必要だ、次に指揮官が必要だ

指揮官は各拠点に置くとして最低2名、のこる一つの拠点は男自身が守ればいい

つまり留守を預かる隊長だ

 

そして兵隊

狼や竜の襲撃から学校兼病院を守れるだけの戦力が必要だ

 

いや冷静になろう

守るといっても城ではない、ただの家だ

そんなものもともと守りには向かない

守るべきは家ではない、生徒と患者の命だ

 

ということは家は守れない前提で動くべきだ、城壁とかないし

であればまず何が必要か、輸送能力だ

幸い、猪が数匹いる、かれらはすでに患者を運ぶのを手伝ってくれている元患者だ

かれらに頼もう

 

そして次、その輸送車両を守る護衛である

これはまあ兵士的なやつがいい、これはジトメザルたちに依頼しよう

守りは彼らに任せるとして、攻撃に特化したやつも必要だ、これは熊だろう

次に防御である、これも熊が得意だ、両方任せよう

次に必要なのは通信手段だ、これは足の速い鹿に任せたい

小鹿に頼んでみよう

 

男は午後のいつもの授業の後、日暮れ直前に集会を開いた

もうみんなある程度の言葉は聞き取りも会話もできるようになっている

 

そこで男は話した、南からの脅威と、それに北は負けていると、北と南をつなぐ獣道は現在

南の連中が押さえていると

さらに戦場が膠着状態の今、状況を打開するために隙を探すはずで、

それにはこういう病院や学校みたいな弱みになる場所が一番狙われやすいんだと

実際狙わずとも、狙っていると思わせるだけでも戦力を分散させることができる

野生の動物たちなら、そんな道徳的なルールなぞ持っているわけがない

だから正直言ってここは危ないんだと、、、

 

生徒と患者は動揺した、しかし男は続ける

だから俺たちで、守るんだ、と

 

そして先ほどの役割分担を話、それぞれの種族に語りかけた

各種族の元患者たちは、怖いといいつつも引き受けてくれた

同胞がまだ入院しているからだ

 

なんだか人質にしているみたいでいい気分ではなかった

だが、みんな賛同してくれた

ここに10匹の森の自警団が生れた

 

男は早速、それぞれに合った防具を作り始めた

一番重要な兵士であるジトメザルには男と同じ大鎧を

攻撃と防御に特化した熊には半鎧(胴と垂と兜のみ)と盾を

輸送役にはお腹や頭を守るための装甲を作った

伝令の鹿には身軽に動きつつ大事なところは守れるように軽量の小鎧(胴と脛当てのみ)を

それぞれ作った

なお、製作には細かい作業の特異なリスや小鳥たちが手伝ってくれた

ワコも作業を手伝い、時には進捗管理までしてくれた

 

その間に男は武器を作った

ジトメザル用の槍と剣

熊用の盾

まあ他はなくても大丈夫だろう、おそらく最も柔軟に動ける&動く猿軍団が要である

 

こうして自警団は装備を整えた

次である、男は毎日戦場を見ていてやりたかったことがあった

地図製作だ

 

今まで歩いたところは家に帰るたびに木に彫って記録していた

だが、細かい道はわからないし、敵はすぐに新たな侵入ルートを作ってしまう

そういった刻一刻と変化する戦場を地図へ反映するのは一人では無理だった

さらに植物の分布や機械獣たちの縄張り、さらには南のやつらの配置など

把握したいことが山ほどあった

だが男一人では、把握して家に帰って彫っているうちに状況はおそらく変わってしまう

リアルタイムな地図を作りたかった

 

この小鳥たちに依頼し、空から状況を把握

駐屯地であるこの川の拠点に情報を集約するという方法を考えた

小鳥たちからは快諾を得ることに成功、さっそく地図を作り始めた

少しづつ集まる情報、埋まっていく地図、わかってくる全容

 

男は不覚にも興奮を覚えた

機械の獣たちが仲間を守るために手伝ってくれている

希望の光が差した

 

10匹の内訳はこうだ

熊×1(ワコ)

鹿×2(小鹿と友達)

ジトメザル×4

小鳥×2

猪×1

 

初期メンバーはこれだが、部分的に有志達が参加してくれている

武具防具制作ではリスや他の小鳥が、地図作りにはモモンガや小鳥の友達が

そして小鹿の一族が協力を申し出てくれた

少数だが大変に心強い

 

少しずつ自警団は準備を整えていった

まずは現状把握である

そして次に備えること

 

森は荒れに荒れている、もう種族の縄張りなんぞ跡形もない

狼に食い荒らされ、竜に食い散らかされた残骸しか残っていないような、

殺伐とした森になってしまった

 

あの豊かな森を取り戻す

男は決意していた

 

小鹿の一族は方々に散って、仲間を集めてくれた

さらに他の二つの拠点にも伝令として行ってくれた

一応護衛にジトメザル兵を1匹つけた

 

3日後、伝令小鹿とジトメザル兵はボロボロになって帰ってきた

そしてとんでもない知らせをもたらした

 

洞窟の拠点が竜に襲われた

患者や生徒は変わり果てた姿になっていたそうで、、、

 

さらに滝の拠点に行ったところ

そこは狼が占領していたとのこと

ただここにいた生徒と患者はどうやら逃げたらしく

犠牲者はいたが、全員ではないらしかった

 

男はすぐに指令をだす

まず小鳥たちに滝周辺の偵察を頼んだ

もしかすると付近で迷っているかもしれない

 

続いて洞窟周辺の偵察も頼んだ

同じく辛くも逃げられた者がいるかもしれない

だが拠点の外は地獄である

いつ襲われてもおかしくはない

男は持ち前のビビり根性から

見つかりにくそうなところを隠れ家にしていた

だから隠れ家と呼んでいた、だがやつらには無駄なようだ

 

小鳥が返ってきた

滝周辺に生存者はなし、滝から川の拠点に戻る途中で数匹倒れているのを発見するも

すでに分解が始まっていたとのこと

どうやら襲われたのは割と前のようだ

男の記憶では、分解が始まるのは息の根が止まってから5日後くらいからだ

しまった、、、川の拠点で準備をするのに時間がかかってしまったか、、

早く行っていたら助けられてかもしれない

 

ショックでへたり込む男にワコが声をかける

「生きている者のことを考えよう」

 

男は鼻をすすりながらまた立ち上がる

現時点で滝と洞窟は放棄、生存者の捜索は一旦中断する

そして川の拠点の防御を固めることとした

さらに小鳥と鹿に頼んで、周辺の機械獣に声をかけて

川の拠点に集まってもらおうとした

森の危機である、と

 

小鳥や鹿に説得されて、ボロボロの獣たちが川の拠点に少しづつ集まってきた

みな疲れ切っている、体は泥だらけで、五体満足なものはいない

 

男はその場で話し始める

 

「みな自分の身を守ることで精一杯だっただろう、よく来てくれた

あとで全員の治療をするから、今だけは私の話を聞いてほしい

調べたところによれば、南のやつらは、山脈の入口を盗ったあとそこを起点に

西回りにこの森を攻めている、この川は森の東の端に位置している

彼らがくるのは時間の問題だ」

 

小汚い獣たちは無言のままである

男が続けようとした時、後ろから声がした

 

「お前が来なければ、この戦いは起きなかったのではないか?」

 

振り向くとそこにいたのはエンゲツだった

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