帰り道、ワコはえらく落ち込んでいた
「ぼくのせいで…ごめん」
なんと反省している、男は驚いた
そのまま怒り狂っていてもいいのに、目の前に敵がいるようなものなのに
反省できるその精神力がすごいと思った
「気にするな、正直慌てたが、まあ協力関係は気付けたんだからよかったじゃないか
それに、ワコには通訳という大事な任務がある」
「こいつの言葉、おまえわからないの?」ワコがきょとんとする
男はこの水色竜の言っていることはわからない、ただ、何かの言語であることだけはわかった
ワコはこれがわかるらしい、これはもしや機械生命体の言語なのだろうか
うなっているだけにも聞こえる、これは北の森の猿たちと似ているのかもしれない
ワコが言う
「<これからどこへ向かうのか>って言ってるよ」と
男は答える
「渓谷に向かう、狼たちの本拠地を探す」
竜は答える
「渓谷にいっても無駄だ、彼らの本拠地は山だ」
男は驚いて竜を振り返った
「森じゃないのか?ずっとともに戦っていたじゃないか」
竜は答える
「狼どもも、侵入者がいるといって山から下りて来たんだ、そこで我々とかち合い、争いになった」
男は聞く
「君たちは狼の縄張りに侵入したのか?」
竜は答える
「とんでもない、我々は大昔から森を守るのが使命、侵入など下劣な振舞するわけがない」
下劣ねえ…男はため息をつく
歩きながら男はワコを経由して様々な話をした。
どうやら竜達は自分たちを「古竜族」と呼んでいること
彼らの縄張りは先ほどの森で、白い竜がいた大木は「真樹」と呼ばれていること
古竜族たちはその森を守るのが使命のようだ、何千年も守ってきたみたいなことを言っているが
時々ワコでもわからないことばが出てくる、
ワコが聞き返して確認しても、やはりわからないこともある
これが古竜語というやつなのだろうか
かなり歴史のある種族であることがわかった
ちなみにどうして待っていてくれたのかは教えてくれなかった
理由を話せない以上、なにか思惑があるのだろう
そう考えている時にふと気が付いた
男は、自分が海岸で目覚める前の記憶がない
ただ、不思議なことに、そこを知ろうとする気持ちがわかなかった
むしろ船がなぜここに存在するのか、なぜここには機械の生物がいるのか
藤の森は何なのか、北と南の森はどう違うのか、機械獣の生態、機械樹の仕組み、などなど
とにかく知りたいことが山ほどあって自分のことよりそちらのことが気になってしょうがなかった
船・機械獣・一つ目
ダメだ、男はもう心に決めていた
一つ目とは戦いにはなるかもしれない、けど、島総出で打ち負かしてはいけない
万が一一つ目たちを絶滅させようものなら
今までの歴史や何が起きていたのかの情報を引き出せなくなる、
彼ら一つ目はそのあたりの唯一の手掛かりなのだ、話し合うべきなのだと思っていた
同時に男としては好奇心が勝っている
気になるのは船だ、そのためにも一つ目は絶滅させてはいけない
もはや早くこの島が平和になって、
そういう探検に集中できるようになったらどれほど面白くなるだろうか
などと考えていた、自分のことはどうでもよい
今に興味があり、この島の過去を知りたがっていた、
謎を解くために、この島に起きている、ある種の神秘を知るために
そうこうしているうちに、山の麓へ着いた
ここからは狼の縄張りである
男は一歩ずつゆっくり歩き出した

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