男達一行は狼の住む山を進む
ここは出壁山脈である、入口は渓谷から少し西にあった
道ではなく、尖った岩が階段のように突き出ているところで、まず登ろうと思わないような場所だった
さすがは狼である
今は水色竜が先導して進んでいた、竜がつぶやく
「狼たちは最初麓に住んでいたから、我らとも多少の交流はあった
だがいつのまにか山に移動した、行きやすいとは言えないようなところに行ってしまったため
いまはもう交流はない」
男が聞く
「どうやって山に行くことを知ったんだ?」
竜が答える
「狼の親玉は我らの真樹に時々会いに来ていた、どうやら世代が近いらしい、
山に上がる前に親玉が来て言ったんだ、もうここにはこられなくなる、我らは山へ行くって」
男は驚いた
あの樹と狼の世代が同じとはどういうことか
何万年生きているのだ、狼は不老不死なのか
しかも会いに来ていたって、なんだ?
まるで意思疎通がとれるような言い方じゃないか
いつの間にかだいぶ高いところまで登ってきた
寒くなってくる
そこへ
黒い狼が一匹、道の先に現れた
水色竜が近づいていく
互いに鼻と鼻を近づけて、なにやらうなっている
これも会話なのだろうか
しばらくして狼がちらっとこちらをみる
その後、狼は背を向け、奥へ歩き出した
水色竜も続く、男達も続いた
またしばらく歩いた
しかし高い山だ
もうほぼ頂上なんじゃないかと思うほどにてっぺんまできたような気がする
周りに同じ高さの山がなく、みんな下に見える
少々白い雪が積もっている、寒い…風が強い、雪が降っている
白い景色の中、黒い狼の姿がある
点々と白い地面に足跡が続き、その後ろを竜が、そしてワコと男と猿一行が続いた
ちらほらと他の狼も姿を現してきた
黒ばっかりだ
洞窟が見えてきた
中に入ると、風が無くなり、雪もやみ、静けさに時が止まったような感覚すら覚える
狼はひたすら奥へ奥へと進む
しばらく進んでいくと、大きな空間に出た、目の前が白い
周りを見る、何か動いている、しっぽだ
よく見ると白いのは壁ではなく、体だ
男は高い天井まで目をやる
すると、何かがこちらを見ていた
二つの大きな目だ
暗闇で光りながら
じっとこちらを見つめている
「なにをしにきた?」
目玉がしゃべる
男はびっくりした、天井だと思っていたが狼の腹だった
白い竜なんかくらべものにならないほど巨大な狼だった
黒い狼が竜に話しかける、そしてワコに話、ワコが教えてくれた
「こちらが、我らが狼の王です」と
狼の王は真っ白な毛であった
そして瞳は黄緑とピンクが混ざったような美しい目をしている
そしてとても大きい
なにせ天井から我らを見下ろしているのだから
「貴様らが下の森の者どもか」狼の王はいう
「はい、下からまいりました、我らは北の森からです、
こちらは南の森からの案内役です」と男が話し、お辞儀をする
ワコ達もぎこちなく頭を下げる
水色竜は遅れてペコリと頭を下げる
「ようきたな、人間は本当に久しぶりだ」「で、何しにきた?」
と狼の王
「本日は聞きたいことがあり、まいりました」
「そうか、なにかな?」と狼
「この戦いは早く止めるべきなのです」と男
「ううん…そうさな…でぬしは止められるのか」
「確証はありません、ですが今日ここへ参ったのは止めるために必要な情報を得るためです」
「ふむ、続けよ」
「先日、彼ら古竜族の真樹へ参り、そこの王と話しました、
そこで、我らも竜もこの戦いの原因がわからないまま、ただ争っていることが判明しました」
「ふふははは、あいつが王とな?笑わせてくれる…!
おまけに争う原因がわからないままだと?くだらないな」
狼は笑い出した後、吐き捨てるように言った
「ですが王よ、これは確かめるべきなのです、何が始まりだったのかを、
こちらの古竜より、狼も縄張りを侵されたからこそ山を下りてきたと聞きました、
何が侵入したのですか?」
狼の王はしばらく黙っていたそして口を開く
「われらが侵入に気づき、向かった時には猿と竜どもが争っていたのだ」
「では侵入者を見たわけではないのですね?」と男
「貴様、我らを疑っているのか?」と狼の王は見下ろしてくる
「いいえ違います、私はただ確かめたいのです、そして、この島を平和にしたい、ただそれだけです」
「平和か…だがおぬしはだめだ」
「なぜですか」
「いま貴様は我らに疑いの目を向けた、我らが元凶とでも言いたいかの様だ
久しぶりの人間だから暇つぶしにでも話を聞いてやろうと思ったら、なんと無駄な会話だろう
消えろ、今すぐだ」
「でも…」
「もうよい、下がれ」
狼の王は静かに言い、あっちを向いてしまった
声をかけても微動だにしない、返事ももちろんない、寝てしまったかのようだ
これ以上話しても無駄だと水色竜が言った
まずは一旦撤退することとして、男達は洞窟を出た

コメント