晴輪物語【始記】44 指揮官の夢

観光

男は一つ目に案内されながら船に入った

以前とは違う入口であった

 

一つ目は振り向きもせずずんずんと進む

ひたすら地下へ進む

階段は崩れ、壁も壊れているため、道なき道というか

坂道をひたすら下っていく

右へ左へ、上へ下へ、相当歩いているがどんどん地下に進んでいるのだけはわかった

徐々に上からの光が少なくなってきた

まるで深海へもぐっているかの様だ

ところどころに樹の幹が生え、機械なのかわからないが昆虫や爬虫類がいる

船というより密林か洞窟か、、生命の宝庫という意味では命の箱舟といえるかもしれない

 

突然一つ目が扉の前で立ち止まった

「少々お待ちください」一つ目がこちらも見ずに扉に向かって言った

 

何を待つのか…

すると上から何か降りてきた

 

まさか…エレベーターか!?

 

扉が開く

 

見覚えがある、この箱、この開き方、ボタンの並び、、これはエレベーターだ

なぜこんな朽ち果てた船でこんな機械がまだ生きているのだろうか

 

男は死んでいると思っていた船の生きてる部分を目の当たりにして呆然としていた

「どうぞ、中へ」一つ目が言う

 

男は促されるまま中へ入る

エレベーターの扉が閉じ、上へ向かう

 

このエレベーターは大きい、車は乗れる、そして窓があったのだろう、箱というより枠だ

窓が壊れ、四角い枠にかろうじて天井と床があるだけの崩壊寸前の箱である

 

そして乗って気付いた、このエレベーターは厳密に言うと降りている

体感的には上がっているのだが、つまりこの船は逆さまに着陸しているのだ

エレベーターの足元は凸凹としていて何か仕切りのようなものがついている

きっと照明の枠だろう、四角いあかりがブロックにでもなっていたのだろうか

天井を見上げると、つるつるの床があった、やはり、上下逆さまだ

逆さまに着陸するとはいったいどうしたことだろうか

 

エレベーターが停止する、目的地に着いたようだ

扉が開く

開いたところは大広間というような広大な空間だった

そこは管制室とか艦長室に連れていけや、という男の淡い思いは砕かれた

 

一つ目はスタスタエレベーターを出て歩き出す

 

大広間とはいえ、太い木の根が入り乱れている

元々は会議室だったのか、机が根に押しやられ折りたたまれている

さぞ大きな長机だったのだろう、大会議場だろうか

根を登っては下り、登っては下りを繰り返してようやく少し開けたところにでた

 

そこにいたのは一つ目とほぼ同じサイズの人型だった

だがこいつにはいろんなところからでた

たくさんの線が繋がっていて、それをたどると、船の壁の中までつながっていた

さらにその周囲を樹の根や葉や蔦が囲み、下には水たまりや下草まで生えている

この人型は足がなく、木に飲み込まれているようだ、それにしてもなんという太さの根だろうか

北の森の木々よりも太く、南の森の真樹くらいだろうか…

なんというか、植物と機械が同化しているようにも見える

 

「紹介します、こちらが指揮官です」一つ目が話した

「ようこそ」指揮官が短く挨拶する

 

「お前、名前は?」男が尋ねる

 

「名前はありません、個体番号でしたらあります」

 

「まあいい、、お前の任務は何だ?」

 

「その前に確認させてください、あなたは人間ですか?」

 

「当たり前だ、だからここに来たのだろう」

 

「090より詳細は聞いております、ご無事でなにより、おかえりなさい」

 

「さっきも言ったが、お前の現在の任務を教えてくれ」

 

「本艦の保全及び救助者の捜索・報告」

 

「待て待てお前までこいつと同じようなことを言うのか?

保全?この状態を保全できていると?」

 

「必要最低限の機能を保持し、他は破棄しております」

 

「最低限の機能とは何か?」

 

「母艦の最終命令である人命救助、その達成に必要な機能です」

 

「つまり?」

 

「機械兵士への通信機能および情報保存・解析機能とその他作戦遂行に必要な諸機能です」

 

「なぜおれにすんなり教えてくれるのか?おれは部外者だぞ、これは禁則事項ではないのか」

 

「我々にはあなたがこの船の関係者なのか否か、我々にとって有害か無害かを測る手段がありません、

そして、最終決定権を持つ艦長はここにはおらず、

次席もその下も判断能力のある人間は誰もいません、

また母艦の人工知能も崩壊・機能停止しており、現状として思考と判断ができるのは

母艦機能を緊急事態対処のため引き継いだ私のみです」

 

「それで?」

男は期待した、これは唯一の人間である自分に指示を請おうとしているのだろうか

 

 

「私が本艦から受けた最後の命令は落ちた人間を助けよとの命令でした、

それを最後にほとんどの権限は私に移譲・分離されました。

母艦は着陸時の防御行動と船体・船内の保全に全リソースを割き、

不時着後は船の修復および船内の生命維持に絞って行動しました」

 

なるほど、、よほどの緊急事態だったんだな、、

 

「現在、乗員名簿はデータ破損のため確認不可、あなたが本当に乗船者かは確認が取れません。

ですが、長い間見つからなかった人間が突然現れたため、

その生存能力の高さと思考力を考慮し、外の情報を得るために受け入れたまでのこと、

保護というのは嘘です」

 

「えっ…?」男は面食らった

 

「ははは…ずいぶんと正直な機械だな、情報収集のために知らないやつを受け入れたと?」

男は苦笑いだ、こいつ流れでさらっととんでもないこと言いやがった

まさか機械のくせに嘘なんぞついてくるとは、これは騙された。

男はこの船を見くびっていたようだ。こいつの手のひらの上で転がされていただけだということか

 

「はい、あなたは取引に応じるべきです、仮にあなたに敵意があると仮定して、

我々に危害を加えようとしたとしても、そこの海兵隊員に殺されるでしょう、

彼は本来は戦闘ロボットです、あなた一人どうとでもなる、それに兵士は他にもいる」

 

「人命救助が目的じゃねえのかよ」

 

「人命救助はあくまでも母艦からの最終命令です、

その命令受領から今日まで途方もない年月が経ちました、

それこそ一つの星が生れてから滅ぶくらいの時間です。

あなたがこの海兵の申し出を受領し、先ほど自らの意思で船内に入ってきた瞬間から

我々の最終任務は完了しています」

 

「船内に入ったのは今回で2回目だ、初回はなんで数えないんだ?」

 

「初回はあなたに被保護の意思がなかったためです、実に反抗的で懐疑的でした、

ですが、あなたはこの船そのものには興味を抱いていたようですね

このためまた戻ってくると予想していました」

 

「くっくっく…狙い通りってわけか…見事に騙されたよ」

人工知能がこれほどとは思はなかった、まさか自分が興味を持っているかどうかまで把握したうえで

泳がせてくるとは、ではさっきハッタリで言った言葉も、こいつらに言わされたのか

なんだかこちらが急に小物に見えてきた、騙してくるなんて想像もしていなかった

これはまずい、じつにまずい、こいつの話だと、最後の命令は俺が入船した時点で達成済と言っていた

ということはこの先はこいつが独自判断で行動する可能性がある

 

「あなたから焦り・恐れの感情を検知しました、汗が出ていますね、安心してください、

今は危害を加えるつもりはありません、私にも目的がありますので、ここは対話と行きましょう」

 

本当に気持ちの悪い話し方をする機械だ

「取引とはなんだ?」男は聞いた

 

「あなたは気付いていたと思いますが、そこの兵士は現状を詳細に把握する機能が壊れています、

具体的に言うと、映像・画像認識機能は壊れています、

このため他の各種センサー類であなたを識別、

身長・体重・顔の形や体の形を推定し行動していました」

 

「なるほど、つまり目が見えないと…」

道理で船が崩壊していることをわかってもらえないわけだ

センサーじゃわからないのか?教えてあげてもいいだろうに、性格悪い指揮官だこと

 

「我々には兵士がいますが、それぞれ機能が欠けています、そのため、現状把握が難しく、

この状況を把握するには情報が少なかったのです」

 

「つまり、俺の持ってる情報をよこせと?」

 

「話が早くて助かります」

 

気持ち悪い機械だ、言い方も回りくどい、こんな人間いるよな…

 

「聞いてどうするんだ?船は壊れているし、お前も一人だし、兵士はポンコツ揃いだし

わかったところで、お前にはなにもできないだろう、そんな状態でなにをするきなんだ?」

 

「船を修復します」

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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