晴輪物語【始記】51 大災害

観光

神の樹は踏ん張っていた

触手はいたるところから生え、北に向かおうとしている

それを片っ端から止めているのだ

だがほぼ無限の材料を持つ指揮官の触手が若干勝っていた

そんな時森の奥から機械兵士が現れる

 

「来たか…」白竜がつぶやく

「ここからが正念場ですね」黒色竜が言う

 

とさらに森の奥から指揮官が現れる

白色竜は驚愕する

 

「どうしてこの場所が分かったんだ…」

 

「邪魔な雑草は根絶やしにしないと…私の庭なのだから」指揮官が首を鳴らしながら言う

 

「フフフひきこもりが、外に出られてイキがっておるな、若いのう…」

真樹が言う

 

「黙れ老木、貴様は私に引き裂かれるのだ、あきらめろ」

 

「やれやれ、この枯れ木の老いぼれにご指名じゃ…

腕がなるのう…腕なんてないんじゃがの、わし樹じゃから」

 

機械兵士と鉄の触手が神の樹と竜族に襲い掛かった

 

ところ変わって北の森

 

森の戦士達+ドドフンヌ一行VS機械兵士+エンゲツ一族の争いは機械兵士側に優勢だった

エンゲツ達は見かけない武器を使ってきた、音がする種のようなものだ

見かけない物体に機械獣たちは大いに困惑していた

だが男はこれが何かわかっていた

手榴弾だ…まだ使えるものが残っていたのか…

 

負傷者が増える、新たな武器に動揺が広がる

戦況は不利だった

 

男は考えていた

指揮官を引きずり出すにはこの兵士達を全滅させる必要がある

だがエンゲツ達があちら側につくとは…そういえばしばらく見かけなかったが

まさかこんな形でよりによってあいつらの側につくとは…全く狡猾な一族である

 

とにかく数を減らさないと、まずは手榴弾をつぶす

男は刀を握り直し、エンゲツ達を切っていく

ちょこまかとすばしっこいが、実際のところ防御力は皆無なのがこの一族の特徴である

その分頭脳と脚力に特化している

そして体が小さいため、早い割には追いつくのはそこまで苦労しない

こいつらが怖いのはその頭と器用さなのだ

 

男がエンゲツを中心に切り、ジトメをはじめとした他種族は機械兵士を倒すことに専念している

だがどこからやってくるのか、機械兵士たちはまだ山から下りてくる、意味が分からない

もう第何波なのか…

 

これではキリがない

いずれこちらが負けてしまう…

 

「きたあああああああああああ!」ワコが叫んだ

男は声の方に振り向く

 

すると土煙と轟音が聞こえた

バキバキとすさまじい音が響く

一瞬、戦場の時間が止まる…

 

大木が土煙を貫き一直線にこちらへ飛んできた

逃げ遅れたエンゲツと機械兵士に突き刺さる

 

飛んできたところを見ると壁があった

いやこれは…オオヅツだ…

 

見上げると巨大は大熊が仁王立ちしていた

森の樹よりも高い

なにもわかっていない機械兵士はオオヅツに手榴弾を投げつける

バーン!という爆発にも大熊は全く動じない

 

だが、少なくとも無礼者がいることは気付いたようだ

ゆっくりと下を見て、その無礼者に目を付けた

機械兵士は逃げる、機械でも恐怖心はあるのだろうか

だがオオヅツは手で兵士を鷲掴みし、そのまま大きな口に投げ込んだ

兵士を…食いやがった…エンゲツがつぶやく

 

食った兵士がもっていた手榴弾が中で爆ぜる

だがこの熊にはそんなものは効かない、お腹も鉄でできている

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

ガなのかバなのかわからない、ただただデカい轟音が森中に響く

声の正面にいた者は敵味方問わず吹っ飛んだ

男も耳をふさいでも頭に響いてくるような爆音だった

初めて出会った時よりでかくなっている気がする

 

オオヅツは爪を出し、だれかれ構わず振り回す

樹でも兵士でも獣でも敵味方関係なく切り刻まれ、高く舞い、遠くへ吹っ飛んでいく

ついに大災害がやってきた、狙い通りだ

だが…やはり思っていたのと違う、激しすぎる

 

オオヅツの怖さを知っている機械獣たちは距離を置いて兵士たちと戦い始めた

だが何も知らない機械兵士たちは、勇敢なことにこの怪獣に立ち向かっていく

オオヅツはつぶしたり食ったり蹴ったり、大暴れだ

男はこんな阿鼻叫喚の地獄の中でもニヤリとしていた

正直危なかったからである、窮地を救ってくれてありがとうと心の中では踊り狂っていた

 

状況は変わった

今こそ挽回だ

 

激しい戦闘が続く、状況は森の戦士達に有利になっていた

エンゲツ達を中心に始末していく、兵士は怪獣退治にご執心だからだ

オオヅツは圧倒的な力で兵士達をねじ伏せていく

だがこちらの機械獣も犠牲になっている

立ち向かう兵士達の分、こいつらは死んでいる

願ったり叶ったりである

 

「だいぶ敵を減らせました」猿の中隊長が叫ぶ

確かにほぼ駆逐できた、エンゲツ達も倒し、散り散りになっている

だがまだ兵士たちは残っていた

 

すると突然オオヅツが空を向いて固まった

まるで時間が止まったようだった

 

オオヅツはぐるっと向きを変え、出壁山脈に向かって走りだした

やつにしがみつく兵士達はすごい振動で振り回され飛ばされていく

道中の樹々を殴り倒しながら、オオヅツはなんと山を登り始めた

何だろう、山脈はとても高くて大きいのだが、オオヅツが登るのを見ていると

とても低く簡単そうな山に見えるのだった…

アッという間に山の頂上までたどり着き、そのままてっぺんを飛び越え姿を消した

あいつは南へいったのだ…なんで急に…気まぐれにもほどがある

 

「気合を入れろ!今こそ畳みかけるんだ!」男は声を張り上げる

おかげでだいぶ数が減った、こちらも犠牲は出ているが

今しかない

「死ぬ気で戦え!逆転するなら今しかない!意地を見せろ!」

 

森の戦士達もオオヅツに感化されたのだろうか

ものすごい闘志で激しく戦い始めた…

 

戦士達の奮戦もあってだいぶ取り返せた

しかし戦士も機械兵士も満身創痍でふらふらボロボロである

もうギリギリの戦いになってきていた

 

そんな時山から新たな軍勢が下りてきた

機械兵士と…指揮官である

 

指揮官は真っ先に男の前に来た

「よお…見ないうちに老けたか?」

 

男は言う

「タイミングの悪い男だな、だから友達いねえんだよお前、しかも見た目きもいし、タコかよ」

 

「あのでかい熊を送り込んだのはお前か?」と指揮官

 

「ああ?お前の船まで行ったのかあいつ」

 

「いや貴様らの言う神の樹とやらだ」

 

「!?」男は驚く

こいつ神の樹を襲いに行ってたのか

 

「良いところだったのにとどめを刺せなくて残念だよ、あの樹、そう長くは持たないだろう」

 

「てめえ、真樹に何をした!」

 

「薙ぎ払っただけさ、これでこちらが動きやすくなった、あの樹はもうだめだろう

ただあの熊のせいで最期を見届けられなかったのは残念だ」

 

「てんめえええ」男は震える

 

「おうおう落ち着け、まずは話そうじゃないか

私に殺されるなんて名誉なことではないか、特別に名誉市民として

貴様も船の片隅に飾っておいてやろう、喜ぶがいい、この雑魚が」

 

「光栄なことで、、、!」

男は切りかかった

 

触手と刀が切り結ぶ、火花が散る

しばらく切り合い、また指揮官は話始める

 

「私は人間を守るのが使命だった、だから人間への尊敬の念は忘れたことがない

よって、同じ姿で戦ってやろう、ああ、礼なんぞいらん、当然のことだからな」

 

指揮官は無数にある触手を捨てはじめた

バラバラと地面に落ち、最後に残ったのは人間と同じ手足だった

触手の一つをつかんだ、それは鈍く光ったと思ったら、剣に変わった

 

「私はフェアな男でね、対等な姿で戦いたいのだよ、まあそれは建前で、

本当はこの姿で君を殺すことで、君や森の獣どもに絶望を与えたいのだ

そんな姿で生きていてもなんの価値もない、私と一つになりたまえ、それが

君たちが最も輝ける生き方なのだ」

 

「何言ってんだかわからねえが、フェアってのは感心だな

じゃあそのお心遣いに応えておこう、俺の弱点はここだ」

男は手で頭からへそにかけて線を切った

 

「正中線って言ってな、この線上に人間の急所は集中してるんだ、ここならどこを切っても

俺を殺せるぞ」

 

「あはははははは!人間とは面白いな!よろしい、では私も答えねばなるまい

私の胸にあるこの結晶!これを壊せば貴様の勝ちだ!いいぞお、これでこそ戦いだ!

でははじめようか人間!」

 

「人間なめんなよ」

 

 

 

 

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