男達は夜明け前から行動に出た
まず自警団の足の速い者を中心に北の森まで点で配置する
万が一交渉が決裂した場合に備え、男が逃げるためだ
俊足が売りの伝令鹿を中心に、男を北の森まで輸送する手段を整えた
さらに道中には猿たちに罠やらなんやらで考えられる限りの邪魔をしてもらう
止められるとは思っていないが取れる手段はなんでも講じておくものだ
作戦では交渉決裂と同時にあらゆる手段で一瞬でもやつをひるませ、
その隙にできるだけ距離をとるというものだ
そして太陽の光が地平線から漏れ出したあたりで、男は船に行った
正直現在の技術力と戦力でできることはほぼない
邪魔といってもいたずら程度だろうし
一瞬ひるませるといっても、そもそも効かない可能性だった大いにある
だから正直男としては出たとこ勝負であり、
もっと言えば男の言葉くらいしか状況を変えることはできないのが現状だ
つまり、奇跡を信じるしかないということ
船の前に立つと、どこからともなくぬるっと例の一つ目が現れた
男に声をかける
「おかえりなさい、ずいぶん長かったですね」
「ああ」
「では、早く中へ戻りましょう」
「戻ってどうするんだ?」
「?」
「なぜ船に戻る?」
「ここより安全だからです」
「保護するといっていたよな?何から保護するんだ?」
「この星は危険です、我々は人間の保護を任務とします」
「なぜ危険なんだ?」
「その質問に対する回答はもっておりません」
「ではなぜ保護するんだ?」
「その質問に対する回答は持っておりません」
「お前の任務は何だ?」
「船から落ちた人間の救助・保護及び母船の護衛です」
「あんなにボロボロになっているのに護衛が必要なのか?」
「船はまだ機能しています」
「はあ?おれ以外に保護した人間はいるか?」
「いません」
「探し始めたのはいつからだ?」
「命令受領日は884年2月15日0時19分、同刻より捜索を開始」
「それ…何年前なんだ?」
「記録なし、受領日から本日までの日数を算出…計算できません」
男は次の言葉に詰まった、884年?3桁?どういうことなんだ
てっきり3400年とか、男の知っている年よりも未来的な年代が出てくると思っていた
何か独自の暦だろうか、こいつは何年前から生きているのか
「お前、いままで休みなしで動いていたのか?」
「いいえ、先日から準備待機状態より復帰、再起動しました」
「再起動日はいつだ?」
「現時点で392日5時間09分です」
「約一年前か、、ずいぶん最近だな」
男は奇妙な感覚になった、自分が海岸で目覚めたあの日から今日まで何日経っているのだろうか
「再起動命令を受領したためです」
「命令?誰からだ」
「指揮官からです」
「指揮官がいるのか?どこに」
「軍事機密につきお伝え出来ません」
「いいから教えろ!」
「禁則事項です」
「おれは保護対象なんだろう、この船の搭乗員として、
船の現状とこれからの行動計画を知る権利があるはずだ
だから責任者に合わせろ、保護されるかはそれからだ」
男はこの場で決着がつけられないと思った
キリがないと思っただけでなく、指揮官がいるということ
さらにこいつは末端の兵士だから、それほど情報は持っていないのかもしれないと考えたためだ
なにより、指揮官がどんなやつか気になる
そして男がずっと気になっていること、この船と機械獣の関係を、
その指揮官は知っているかもしれないと思った
かなり無理やりな話をした、権利とかなんとか言っておけばいいと思っていた
理由なんてなんでもいい、どうせこいつの任務は人間を連れて帰ることだ
任務達成につながるのなら、経緯や方法はなんでもいいはずだ
おそらくその指揮官とやらも、ひょっこり現れた人間には興味があるはずだろう
だから指揮官のところまで行けると、男は考えていた
否、危険を冒して冒険することに興奮を覚えていた
「了解了解、申請を承認、ご案内します、こちらへどうぞ」
一つ目は船に向かって歩き出した
男もゆっくりとついていく
この時点で、用意した作戦は無駄になった
あとは出たとこ勝負、久しぶりに男の好みの展開になってきた
どう考えても不利な展開だが、男は宝さがしをする海賊のように高揚していた
宝箱の前まで連れて行ってくれるというのだから願ったりかなったりである
それにオオヅツやドドフンヌが協力してくれるという知らせもまだ来ていない
時間稼ぎが必要であるということも事実だった
色々と言い訳をしつつ、未知との遭遇を楽しみにしている男は
口元を緩ませつつ、船の中へ入るのだった


コメント