男は真樹の森に再び来た
葉や蔦はオオヅツの体からも生え始めていた
着実に彼は森の一部となり始めている
白竜が現れ、男の隣に座った
真樹に男は語り掛けた
あの戦いでの様々な支援に感謝を述べ
その後、これからのこの島についての展望を語り始めた
今回、男が最も気になっていたのは
なぜあんなに近くに危険分子がいたにも関わらず
あらかじめ対処しなかったのかということだ
戦いの序盤にこの老木は根っこだけは地下に這わせていたといっていた
それだと知っていながら放置していたことになる
疑問をぶつけたところ
白竜を経由してご神体は返事をした
「まず最初に謝らねばならない、貴様にその対処を任せたことを
そしてこれも話さねばなるまい、我らに対処は不可能だったと」
なぜ対処ができないのか
根を送り込んでひねりつぶせばいいではないか
あんなにうだうだ会話していたら準備の時間を与えてしまう
「我々には確実にやつを始末する方法がなかったのだ
その根で攻撃し逃した場合、おそらく真っ先に真樹がやられる
そうするともうこちらで指示を出せるものがいなくなる
だからやるとすれば段階的に、森全員の力を借りて戦うしかなかった
そして真樹のほかにそういう指示の出せるものが必要だったから
それを時間をかけて育てていた
それはこの森に抜けている強く固い意志を生み出すためにだ」
「…」
「そこで貴様が現れた、意志もあり知能も高く行動力がある、
ちょっと計画性は足りないかもしれないがそれこそはこちらで補えばよい」
「つまり、おれはお前らに使われたということか」
「すまない、だが必要だったんだ」
「わかったそれはもういい、刀をもらった時にそんな感じはしていた
文句を言いにきたのではなく、今後の話をしに来たんだ」
「聞かせてくれ」
「まず、この島の植生や地理を把握し機械生命の生態やこの島の全容を把握する必要がある
そうすればすぐ近くに脅威がいましたなんて間抜けなことにはならない
また外敵が来た時に状況把握は容易になるし、地理を把握しておくことで適切に戦力を
配置し整えることで迅速に手を打てるようになる
エンゲツのような危険分子がまだいるから、どこにどんな奴がいるかも把握しておきたい」
「続けてくれ」
「次に戦力についてだ、まず今の自警団を再編して機械生命体が自分たちで統治できる仕組みを整える
そして次に島の外に出て、地理や植生の把握、海の中も知る必要がある、
島だけ知っていればいいというものでもないし、
もしかしたら新たな脅威や逆に戦力があるかもしれない」
「どこへ行くのだ?」
「南に島が見えた、あれは比較的近いところにある、
あそこにまた変なのがいないかは調べておく必要がある」
「わかった、今回の戦いでおぬしのそのあたりの行動は止める必要がないと判断している
続けたまえ」
「ありがとう、で聞きたいんだが、人型は今後どうなる?」
「ああそれか、耳が早いな、彼らはいま森で分析している、
じき新たな生命として生まれ出るだろう」
「なんで新たな生命として生み出すのか」
「今回、私たち森の生命は、船の兵士達や親玉に苦しめられた
つまり人型は脅威である、だが逆を言えば味方にすれば強力な種族になりうると認識している
そして現に味方の人型もいた、貴様だ、我わらは陰と陽、両側面でこの人型を観察し
いま分析もしている、現状この森の生き残りのためには必要な生命であり手段の一つだと判断している
だからまた暴れたりしないようにしたうえで、新たな族として生み出すつもりだ
貴様にはその人族たちを束ねてほしい、そして立派な戦力として鍛え上げ、この島を守ってほしい」
「そのつもりだ、そっちも協力しろよ、もう日和見は無しだぞ」
「安心しろ、今回の実績でわしらはお前をかっている、それにこの大熊も
貴様のことは嫌いではないようだ、これからはともにこの島を守り、よくしていこうではないか」
「都合の良いことを、まあおれも知識欲があるからな
この世界を探検して色々な知識を得たいと思っている
それも合わせて協力してくれるなら、お互いに助け合えるということだな」
「その通り、利害の一致というわけだ、なにせ貴様はわしらにあの船や兵士の膨大な情報を
いれる手はずを整えてくれた、これは大恩というほかあるまい、本当にありがとう
救ってくれただけではなく、これからのわしらのことまで考えてくれているとはな」
「まあおれのやりたいことに合致しているだけのことだよ、おれは知りたいんだ
この森も海の向こうも、全部」
「強欲だな、まあその欲望にわしらは救われたのだが、、お礼と言っては何だが
今後何か作りたいものがあれば遠慮なくいってくれ、この前の刀はもう作れないが
そういうものの制作も今後は進めるべきと考えている」
「なるほど、知識を得て、その技術の存在を知ったと、まあまずは人型が生れてから考えよう
ついでにお願いがある、この島の名付けをさせてくれ」
「よかろう、なんと名付けるのだ?」
「朝霧島(あさぎりじま)だ、あの終わりの地、
ジトメサルの親玉と戦った時の霧と朝日が忘れられない
そしてあそこがその終わりの地の入口と知っては、なおさら大切な場所だという気持ちがある
だからだ」
「朝霧島か、わかった、受け入れよう」
「ではそのほかの組織づくりも任せてもらいたい」
「任せる、わしも使ってくれてかまわない、できることはやろう」
「ずいぶんと素直になったものだな、どうしたんだ?」
「恩返しさ、貴様が森にもたらしたものは大きい、まあ言葉を選ばずに言えば…」
「おれは使えると?」
「そうだ、その通りだ、これからもよろしく頼む」
「この森はどうやら自分たちが生き残るためには手段を選ばないようだな、情報を得てから
それが余計に露骨に出てきているように感じる」
「仕方のないことよ、いままでは手探りであったのだ」
「まあいいさ、おれは探検して知ることができればいい、あと組織づくりや武器防具などをはじめ
この島に新たな文化を作りだすことも楽しみの一つだ、生命としての深みがでるぞ」
「楽しみだな、お祭りというやつか」
「そうだよ、もう考えはあるんだ、まあ待っててくれ」
「期待している」
男は真樹とあいさつをして森を出た
かなり露骨に自己中なことを言っているが、それは森が一つの生命だからこそ
生存のために様々な手段を講じようとしているに過ぎない
当たり前の行動なのだ
都合よく使われているようだが、悪い気はしなかった
こちらのやりたいこともできるため、持ちつ持たれつというやつだ
男は早速行動を始める
人型が生れるまでの間は時間がある
まずは島の統治の仕組みづくりだ

コメント