晴輪物語【始記】18 機械樹の大鎧

観光

ついに男は作り上げた

鎧の初号機である

 

あれから研究を重ねた

まず鎧の作り方である

細かい技術なんぞないので、できることは限られる

 

まず金属加工で長方形の板を作る、少し厚めに、それをたくさん作る

そして熱を加える、機械樹の樹皮は火で炙ると柔らかくなる

それを金属板の上辺にくっつけて、穴を2カ所あける、これで一つ完成だ

これを大量につくり、これまた火で炙った樹皮を伸ばして糸状になったものを水につけて

冷やし固める

これは実に苦労したが、上手に作るとなんと細い糸になる

一本だとすぐ切れてしまうが、何本かと寄り合わせていくと糸というか中太の糸になる

これで先ほどの板を少し重ねて合わせていく。9枚で一束、これを盾に6束括り付ける

これで腕=大袖の完成である

この調子で大袖をふたつ、草摺、籠手、脛当、と同様の手法で作る

胴は難しかったが、何とかできた

兜は先日狩りで捉えた猪(ナマモノ)の頭骨である

頭のサイズがちょうどよかった、これに機械樹の糸で強化を図る

 

これで試作品大鎧が完成である。

用は板切れを重ねて作っただけの急ごしらえ鎧だ

だが、これでまともに戦えるというもの、何より身を守ることができる

あの時のように身も心ボロボロになることは減るだろう

 

次に武器である

これはとても単純である

木の棒に尖った機械植物の葉を括り付けるこれで槍の完成だ

古代人はこんな感じで試行錯誤を繰り返していたのだろうか

 

むしろ成果は鎧だけではない

この試行錯誤の中で生まれた、小道具たちである

武具を作るための道具を作るための小道具を最初に作った

 

ピンセットのようなもの、樹皮を溶かす器、かき混ぜ棒、スプーン、箸などなど

道具を大切にする意味が分かる、本当にこいつらがないと何も作れない

ただ不思議なもので、機械樹の樹皮は異常に熱に弱かった

てっきり金属だから強いものかと思いきや、ナマモノの植物のように燃えないにしろ

溶ける、だが斧でたたくとびくともしない、何なんだろうか

まあ長時間火に当てないと溶けないあたり、森林が溶けることはないのかもしれない

 

調子に乗って金属糸で靴下や腹巻を作ってみた

ところがこの樹皮は柔軟性に欠けたため、皮膚がボロボロに擦り剝け血だらけになった

靴下なんかは履いた瞬間に爪を割り、指を切り、悲惨だった

肌着や服が揃うのはまだはるか先であろう

 

帆船からかっぱらってきたカーテンだかなんだかわからない布を川で洗いながら

男は思った

 

これで武装はできた

跡はどう進むかである

そしてここまで装備をそろえたあと、男は暴挙にでる

 

今まで狩った機械獣の頭骨を腰に巻き付ける

エンゲツ、ジトメサル、他イノシシや小鹿など

これで彼らから見れば男は「襲うべき相手」だ

 

ドドフンヌから学んだことである

仲間意識が強く、遺物からの何らかの香りで判別していると考えていた

そしてそれが仲間のものであった場合、実力行使にでる

 

男はわざと攻撃させるために骨を身に着けている

なぜかって?そりゃ返り討ちにするためさ

そして自分を鍛えるんだ

あえて自分を追い込むことで、生き残るすべを得る

戦うことで彼らの癖や新たな面を見つけ、研究に活かす

これも日々の観察の一環である

 

今までは最低限度の研究や準備のために少しだけ機械獣を狩った

今度は道場破りである

 

目的は各群れのボスを狩ること

そしてこの森の頂点に自分がなること

 

なぜこんなことをするのか自分でもわからない

だが男はこうでもしなければドドフンヌに合わせる顔がないと思っていた

なによりオオモリノシロヌシガミに対しても、申し訳ないと感じていた

男を見せろと

 

日の入りともに、男は動き出す

まずは、ジトメサルの集落に殴りこみをかける

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