なんと宇宙船を発見した
男は信じられないといわんばかりに目をまん丸に見開き
実は大き目な機械樹でしたとか思いながらあたりを探索した
だが残念というか、それは機械樹ではなく、宇宙船だった
厳密にいうと宇宙船の一部だった
宇宙船の周囲を観察してみる、傷みがひどい、ひどいというかもう朽ち果てている
そうもうほんとうに原型がないくらいに
ただどう考えても自然発生したものではないことは見ればわかる、といった具合だ
その後も周辺を警戒しつつ観察する
しばらく歩き回った結果、この岩山はほぼ宇宙船だった
だが、バラバラに砕けていたり、ねじ切れていたりとかなり悲惨な状況だ
中というか内部にも木の根っこや蔦や草や苔などあらゆる植物に占領されていて
金属の壁も錆びついてボロボロ、原型はとどめていなかった
昨日今日からあったような船ではない、何十年、何百年と昔のものだろう
だがそれでも男に与えた衝撃は十分すぎるほどだった
まあ機械の獣がいるのだから、人工物があっても違和感はないが
今までいち生き物として機械獣や機械樹と接してきた男にとっては
初めての純粋な機械の突然の登場に動揺を隠せずにはいられなかった
と同時に、突然の文明の登場に混乱しっぱなしで頭の整理がつかない
しかしなぜこのあたりには機械獣も生物もいないんだ、奇妙なほどに静かだ
襲われないのは助かるが、不気味すぎる
森が感じられない、周りは木々に囲まれているのに
一旦落ち着こう
男は野営の準備を始めた
部隊にも警戒しつつ休憩を与えた
持ってきた携帯食を食べる
といっても木の実や果物など、行軍中に採取したものだが
水を飲み、一休みした
一旦忘れよう
来たの森と異なり、この南の森は終始密林という言葉がふさわしい密集具合だった
密度が濃い、生物にしても機械獣にしても、多種多様な生き物がいる
北の森は整然と整理された森であれば、南の森はまさにジャングルである
まさか爬虫類の機械までいるとは、、しかも虫のような機械もいたし、魚の機械もたくさん種類がいた
一個ずつ研究して観察したい衝動が湧いてきていた、
この戦いが終わったら、がっつり研究の時間を獲ろう
とその時、突然遠くからの視線を感じた
この感覚は初めてではない、、、オオヅツとオオモリノシロヌシガミの時だ、、
つまり…いやな予感がする…だいたいこの感覚の後、いいことは起きない
男にとってはいやな思い出しかないのだ…悔しいことに
周囲を見渡すが、猛獣はいない
というか戦闘中隊が周囲に散開して警戒してくれている
いままでなら突撃されて、されるがままだが、今は前と違い、仲間がいる
まあ機械の獣なのだが、でも頼もしいものだ
さて、まだ背中がゾワゾワとするが、男はこの宇宙船の中に入ってみようと思った
そもそもなぜ初見で宇宙船と思ったのか、簡単だ、海の船がこんなところにあるわけがない
地面に食い込んで埋まっているなんてありえないんだ
まあ船底は見てないから、まだ断言はできないかもしれないなと思った
男の願望なのかもしれない、二つの月とか、機械の獣とかなら、と期待してしまっていたのかも
などと考えていると、偵察をしていた猿隊員Aが入り口らしき穴を見つけたと報告してきた
よし、男は立ち上がり、ゆっくり息をすって、覚悟を決める
もう何が来ても驚かないぞと
入口という言い方はだいぶ丁寧な言い方だと思った
これは入るためのものというより、船体がちぎれてできただけの裂け目だ
「お邪魔します~」
こんな独り言が出てしまうのは油断なのか恐怖をごまかしたいのか
自分で自分が情けないと男は思った
中は想像以上に荒れていた
多分いろんな生き物が巣にしているのだろう、入った瞬間に虫がさっと陰に散っていった
気持ちが悪い、虫だけではなく、何かの卵や動物の死骸などが散乱していた
船の中がちょっとした生態系をなしているのかと思うほどに
船自体もだいぶボロボロだ、床が抜けていたり、実際歩いていたら床が抜けて、お供の猿たちが落ちた
階段は残っているようだ
久しぶりというか、懐かしの人工物に男はすこし興奮していた
船は何層にも分かれており、今回は5階層分まで下りた、ここは何階なのだろうか
一階層ごとに偵察鳥を飛ばして、分析・偵察をしながらなのでかなり時間がかかる
今日はこの辺でいいか、いったん地上に上がる
これを繰り返して、当面はこの船の謎を調べることにした
その後男は数日かけて船内を調べた
正直言って船であること以外はほとんど情報をとれなかった
崩れていたりして、なにもわからない、数百年でこんなになってしまうのだろうか
もっとこう、、キーボードとか研究施設とかなんかわかりやすいものを求めていたが
そんなものはでてこなかった
ただ、人間の痕跡は多少あった、人骨である
だがその骨も朽ちてボロボロだった、ただ人がいたのは間違いないようだ
探索も二か月くらいになった時、ふととある中隊長の猿がつぶやいた
「懐かしい」
男は慌てた
「お前ここ知っているのか?」
中隊長はいう
「いや知らない、来た事もない、けど、初めてではないと思う」
男は呆然とする
きたこともないのに初めてではない…?
機械にもデジャブとかいうものは起きるのだろうか、いやでも機械生命体か、にしても信じられない
はたまたバグか、そっちのほうが機械らしくてまだ理解できる
そしてまた男は体が震えた、誰かに見られている
なんなんださっきから、このクソ狭い船内で、だれに見られるというのだ、気持ちが悪い
しかも今回は猿軍団に囲まれているんだぞ、なんなんだよまったく
男は猿に聞く
「俺たち以外に、だれかいるか?」
猿は答える
「誰かというのはどういう意味ですか?」
「誰かってだれかだよ、この自警団以外の誰か」
「いませんね、ただ、一匹移動の速い者がいます」
「誰、それ?新入り?」
「わかりません、さっきから会話を試みているのですが」
「ちょっとまてなんだそれ早く言えよ、なんで言わなかったんだ」
「現状我々にとっての敵は南のやつらです、それ以外は敵と認識されてないので判別できません」
なんということだ、そういうところは機械だな、、、いちいち認識させないといけないのか
というかこれは異常事態だ、敵でも味方でもないなにかがいる
しかもこの機械生命体が敵と認識できないなにか
ワコが男の身を守ってくれた時、はるか遠くの脅威に感づいていた
なぜ今回は気付かないのか、とにかくだ
男は早口で指示を出す
「その移動の速い者を敵と認識しろ、現在地を割り出せ」
「了解…敵位置特定、直上です」
男は上を見た、ところが何もいない
呼吸が止まった、もう死んだと思った
「バカ!びびらせんな!」
と中隊長を振り返る
「ですがすぐそばです」
「どこにいるんだよ」
「近いで…
「おまちしておりました」
男は腰を抜かした
かろうじて動く首で全力で後ろを振り向く
そこには――
デカい一つ目の大男が立っていた


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