男は後日もう一度狼の王を訪ねた
二回目である
「消えろといったはずだが」王はいう
「それでも私はあきらめたくないのです」男は返す
その後男は狼に、北の森が南の者に蹂躙されていること、古竜族も原因はわかっていないこと
南にある人型が関係しているという仮説を王に話した
狼の王は言う
「そなたらの住処の話であって。我らには何の関係も利益もない、かかわるつもりはない」
男はそれ以上は話せず、引き下がった
翌日、また男は狼の王のところへ行った、3回目である
「なんだまた来たのか」
「何度でも来ます」
「何がしたいのだ」
「私の望みはこの島を平和にすること、そのためには現状を把握したいのです」
「それで?我らに疑いをかけると?」
「正直に言えば、疑っていないというのは嘘になります、ただ今わかっている情報だけでも、狼一族が
関係なくて、むしろ被害者側であるという可能性の方が高いことも事実です」
「だから聞きにきたと?」
「そうです。もうやめにしませんか?お互いにこれ以上犠牲は出したくないでしょう」
「何を聞きたいのだ」
「侵入された時の詳細を」
「前にもいった通りだ、わしらにもわからぬ、何が侵入したかはしらぬが、
わしらが来た時には竜と猿が争っていただけのこと」
「竜と猿は侵入していません、それぞれ別の何かを追っていて、出会ってしまったのです」
「それはなにか?」
「まだ仮説ですが、南の人型機械ではないかと」
「ほほう、それはまた飛んだ話よの」
「詳しい経緯は不明です、だからこれから、その人型機械と話すつもりです」
「そなたは人型の仲間ではないのか?」
「いいえ、彼らとは相いれません」
「これから裏切るとも考えられるが?」
「それはないですね」
「なぜ?」
「自分への利益がないからです」
「はははははは、ただの弱者の分際で利益など語るのか」
「いえ、利益はあります。ただし、私へのそれ、ではないですが」
「つまり?」
「私には島へ返すべき恩があります」
「恩、か」
「では話してどうするのだ?彼らを殺すのか?その小枝のような体で」
「確かに非力ではありますが、今の私は一人ではありません、
それはこんな私でもついてきてくれる仲間ができたからです」
「ほほう」
「彼らがいるから私は生きていける、彼らに恥ずかしい姿は見せたくありません、
私の今の立場は彼らに見本を見せるためにあるのです」
「それで?戦うのか?」
「話し合い次第ですが、戦うことになるでしょう」
「なぜ確信する?」
「彼らは私を保護対象と考えています、ですが私は今保護される方が生きていけない
あの船はもう死んでいるからです」
「続けなさい」
「あの船は船としての機能を喪失しています、一体何千年前なのかは知りませんが、
ここからは私の仮説ですが、人型はまだ船が生きていると思い込んでいて、
喪失前の指示をまだ守っているように見えます」
「そうだとして、話して戦ってそのあとはどうするつもりか」
「こういうとあなたにはまた笑われてしまうかもしれませんが、
私は共存の道はないかと考えています」
「いや笑わぬ、続けよ」
「おそらくこの島に今のような害を及ぼす可能性がる以上、手は打たねばならない
だが命令にのみ従う彼らとの理性的な話し合いはほぼ不可能だと思うため
いずれ排除はしなければならない、だがただ排除するには彼らの能力は惜しい」
狼の王はその大きな目をまるで思考の速度に合わせたように、ゆっくりと細め、沈黙した
「どうする気かね?」
「そこでお知恵をいただきたいのです」
「どんな?」
「私は、この島の真理は、森にあると考えています、
彼ら人型を、この島の真理の一部にすべきではないでしょうか」
「わははははははははははははははは!おもしろい!おもしろいぞ小僧!
いまだかつてこのようなことを聞いてきた者はおらなんだ!ははは!
…それで、知りたいことは?」
「あなたの知っているこの島の歴史を知りたいのです。
それが、この島の真理が森にあり、その神髄がどこにあるのかを探る手掛かりになると思っています」
狼はしばらく男を見つめていた。やがて口元がわずかに緩む。
「貴様のことはどうでもよいが、森の話は興味がある。
明日また来なさい、わしの見聞きしたものだけになるが、話そう」
男は洞窟をあとにした。
自らの仮説を話したのは狼の王が初めてだ。
あとは王の話を聞いて判断しよう。


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